海外サッカー挑戦の先に見えてきたもの ―それぞれのサッカーとの向き合い方―

海外サッカー挑戦の先に見えてきたもの ―それぞれのサッカーとの向き合い方―

サッカーに対する想いや考え方は人それぞれのものがあると思います。 今回はモンテネグロ1部リーグで活躍されている、日野健人選手にサッカーをとおしたこれまでの経験やサッカーに対する想いを語っていただきました。


ゴラッソ読者の皆様、はじめまして。日野健人と申します。
現在は東ヨーロッパにあるモンテネグロという国のトップリーグに所属するFK Komというクラブでプレーをしています。
この度、ご縁をいただき記事を執筆させていただくことになりました。宜しくお願い致します。
Jリーグでのプレー経験はなく、日本では無名のプレーヤーです。自分が歩んできた普通とは少し違う道や観点から、読者の皆様に何か伝えられることがあればと思い、今回の記事を書かせてもらいます。

経歴

1998 - 2002:鵠南FC
2003 - 2005:エスポルチ藤沢
2006 - 2008:三重県立四日市中央工業高等学校
2009 - 2012:関東学院大学
2011、2013:神奈川県成年国体代表
2013:HBO東京
2014:USV Wies(オーストリア8部)
2014 - 2015:FK Arsenal Tivat(モンテネグロ2部)
2015 - 2016:SV Tondach Gleinstätten(オーストリア5部)
2016 - 現在:FK Kom(モンテネグロ2部→1部)

人として成長するために、自分にとっての海外サッカー挑戦

神奈川県藤沢市で生まれ小、中学校と地元のサッカークラブでプレーをする中でプロサッカー選手になるという夢を持ちました。高校から親元を離れ三重県立四日市中央工業高校、関東学院大学とサッカー部でプレーを続けますが、プロになれるような飛び抜けた能力や実績を残すことなく、時間が過ぎていきました。
大学3年時、周りが本格的に就職活動を始めていく中で、プロサッカー選手になるという夢も諦めかけ、本気でやりたいこともない、中途半端な自分がいました。

そんなタイミングで神奈川県成年国体代表に選出され、関東予選(ミニ国体)を突破し全国ベスト4まで進みました。国体というのは各都道府県の選抜チームで行う全国大会で、各県によって選手の選考方針等が異なります。社会人リーグに所属する選手だけでチームを構成する県もあれば、学生だけの県もあります。
その中で当時の神奈川県代表は社会人と学生を混合したチーム構成をしており、いろいろな世代の、いろいろな価値観を持った選手たちとプレーをすることになりました。それまで部活動という枠組みの中でしかサッカーをしてこなかった自分にとって、そこで出会った人たちは自分の中のサッカーという世界観を変えてくれました。

そこにはそれぞれの目的や価値観でサッカーと向き合っている大人たちがいて、中途半端な当時の自分をダサいと感じました。そこから自分や将来に対して向き合うようになり、出てきた答えが「サッカーを通して世界を見る」というものでした。
ここで一つ、海外に出ている多くのサッカー選手たちと大きく異なる点は、サッカーで成り上がるとか、ヨーロッパのトップリーグでプレーをするとか、日本代表になるというようなサッカーに対する目標は一切持っていなかったことです。

簡単に言えばサッカーで上に行く為に海外へ出たわけではなく、海外に出ていろいろなものを見て人間として成長することが目的でした。当時の自分にとってサッカーは目的ではなく手段で、それが自分なりのサッカーとの向き合い方でした。
海外で最初にプレーをすることになったオーストリアのクラブ(当時8部リーグのクラブ)は周りのレベルは高くなく、リーグもアマチュアでした。しかしそこで学べたことが二つあります。

一つ目は、外に出ればサッカーで生きていける世界があるということです。自分が所属することになったクラブはその年、リーグ昇格を目指しておりそのための補強選手として、クラブ探しをしていた自分に興味を持ってもらい、契約に至りました。下部リーグでもサッカーだけで生活をしていける条件を与えられ、人々も豊かでいつも周りが助けてくれました。またそれは国や街の経済状況が良いから成り立つことでもあると気付きました。
社会が成り立っているからこそサッカー(スポーツ産業)ができること、また実際に外に出ること(行動すること)で見えるものがあると知りました。

二つ目は、外国人選手としての自覚です。前途したように自分はクラブをリーグ昇格させるための助っ人として獲得されました。加えて周りのレベルが高くなかったので、チームを勝たせるために自分がやるべきこと、取るべき行動、示すべき姿勢を常に考えました。それは後に海外サッカーで生き残るために必要な自分の中の基盤となりました。
仮に自分が初めからある程度レベルの高いリーグやクラブでプレーをしていたら、そのような考えは生まれなかっただろうし、大した実力もないまま勘違いをして短命なプレーヤーになっていたと思います。

手段から目的へ、自分を変えたもの

次に移籍をしたモンテネグロのクラブで、サッカーに対する価値観を大きく変えさせられることになります。モンテネグロに移籍をすることになった経緯にもいろいろとありましたが、当時の自分の目的は世界を見ることだったので、大好きになったオーストリアを離れるのは寂しくも、国を移動することに対して抵抗はありませんでした。
しかし実際に行ってみるとそこはオーストリアとは違いかなり貧しい国でした。実際に所属することになったクラブ(当時モンテネグロ2部リーグのクラブ)ではプロリーグであるにも関わらず給料未払いなども経験し、生活的にも厳しかったですし、オーストリアでは周りが助けてくれたのに対してモンテネグロでは周りに助けを求められました。

この差は何だと思いつつも、自分の目的である世界を見るという観点で見た時に、貴重な経験をさせてもらっていると、感謝の気持ちが芽生えたのも事実です。そんな生活の中で、自分でも気付かない内にハングリーな精神が育っていました。
そして、これまで周りに助けられることでしか生きてこなかった自分の甘さと、世界の広さを知りました。

その後再びオーストリアに移籍したのですが(当時オーストリア5部リーグのクラブ)環境も生活も人々も豊かなはずなのに、自分の中で「何か」が欠けていました。それが「ハングリーさ」でした。
実際にヨーロッパの地でプレーをしていて感じる上へのチャンス。サッカーと向き合う中で見つけた自分自身の上の目指し方。そして、サッカーで勝負をしたいという気持ち。ハングリーさが自分を変え、手段であったサッカーが目的となり、再びモンテネグロの地へ戻り本気で勝負をしようと決めました。

そして昨シーズン所属するクラブでモンテネグロ2部リーグ優勝、昇格を果たし、ようやく一国のトップリーグで戦う切符を手にしました。これからも様々な困難はあると思いますが、手にしたチャンスを無駄にはしません。まだまだ挑戦の道は途中です。
客観的に見ても不器用で遠回りをしていると思いますし、もっと早く気付きやっておけば良かったことは多分たくさんあります。それでも一つだけ自信を持って言えることがあります。それは、自分の気持ちに正直に進んできたということです。だから後悔はしていないし、自分の道には自分で責任を持つことができます。
そしてそこには多くの人々の応援や支えがあります。だからこそ自分は今この挑戦を続けることができています。この場をお借りして自分に関わってくれているすべての人に感謝の気持ちを伝えさせていただきます。
読んでいただきありがとうございました。

参考リンク

海外サッカー挑戦で得た経験を日本の子供たちに伝えたい - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

https://camp-fire.jp/projects/view/45817

海外サッカー挑戦を始めて4年、現在はヨーロッパのモンテネグロという国でプレーしています。自分が今ここで実際にしている経験から得たものやチャレンジの大切さを、オフシーズンで一時帰国する12月、1月の期間を利用してサッカー教室というカタチで日本の子供たちに伝えていくための活動の資金調達をしたい。

このまとめのライター

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