モンゴル代表エースは日本語ペラペラ!?

モンゴル代表エースは日本語ペラペラ!?

今回は以前モンゴルの FCウランバートルに所属していたときのことを大津一貴選手に語っていただきます。


私が初めて海外でプレーすることになった国が、日本と同じ東アジアサッカー連盟に属するモンゴル。成田空港からは直行便で片道約5時間。中国とロシアに挟まれた場所に位置する内陸国です。みなさんモンゴルと聞いて何を思い浮かべますか。自然豊かな大草原?移動式住居のゲル?そこに住む遊牧民?歴史の授業で習ったチンギスハーン?ブフと呼ばれるモンゴル相撲?おそらく、日本で生まれ育った人たちにとってのモンゴルは、きっとこのようなイメージだと思います。私も現地に行く前は、このようなイメージしか浮かびませんでした。しかし、私が住んだモンゴルの首都ウランバートルは、その想像をはるかに超えた風景が広がっていました。

首都ウランバートルにチームが集中している、特殊なリーグ構成

まず、はじめにお伝えしたことは、首都のウランバートルに人口が集中していることです。モンゴルの人口が約300万人に対し、ウランバートルの人口は100万人以上。人口の約45%が首都に住んでいることになります。ちなみに面積は日本の約4倍もあるので、どれだけ集中しているか少しは想像が深まるかと思います。
その事情はサッカーの国内リーグにも影響しています。首都ウランバートルを拠点にしているチームが9割。私が所属したFCウランバートルも、名前の通りウランバートルを拠点にしているチームです。

今年のモンゴルトップリーグに参加しているチームの中で、唯一ハンガリットというチームだけが、ウランバートルから車で約6時間離れたエルデネットという街を拠点にしていますが、そのチーム以外は全てウランバートル。必然的に、ほとんどの試合がウランバートルで行われます。
人口もサッカーチームも集中しているウランバートルは、人が集まるだけあって大都会です。街の中心部には近代的なビルが並んでいたり、とてつもない車の交通量だったり、最近ではファストフード店やナイトクラブも増えてきています。
そんな街で始まった私の海外生活1年目、ある選手との出会いが待っていました。

モンゴル代表エースは日本語ペラペラ!?

「はじめまして、よろしく!」
「ん!?はじめまして。よ、よろしく…!」
私がチームに合流してから数日経ったある日、日本語でフレンドリーに握手を求めてきた一人の選手がいました。突然日本語で話しかけられたので、私は驚きながら返事をしました。
彼の名前はバヤルジャルガル。愛称は『ハバ』。私と同じ年の1989年生まれ。
ハバはモンゴル生まれモンゴル育ち、生粋のモンゴル人ですが、15歳の時に来日しました。石川県の日本航空高等学校石川へ留学。その後進学した、日本航空専門学校時代も含めると5年間日本に暮らしていたそうです。私もハバも同じ時期に、お正月に行われる高校サッカー選手権の国立の舞台を目指してサッカーをしていたことになります。そんな話を流暢な日本語で聞いて、私はただただ驚いていました。
来日当初は“あいうえお”も分からない状態だったそうですが、5年間でペラペラの領域になったそうです。本当に凄い!本人曰く、お笑い番組を見て一気に日本語が上達したそうです。その影響なのか、同じFCウランバートルで一緒にプレーした関西出身の日本人のチームメイトに「なんでやねん!」と言って、よくからかっていました。
漫画のワンピースが大好きなハバですが、サッカーのプレー面では、誰が見ても間違いなくチームでナンバー1の実力の持ち主でした。攻撃的なポジションで、フィジカルと技術を活かした突破が武器。自らゴールを狙うだけではなく、時にはチャンスメイクもします。私のプロ初ゴールをアシストしてくれたのもハバでした。更にその試合では決勝ゴールも決めたハバ。この試合に象徴されるように、ゴールやアシストの『結果』を残すことができる選手です。現在もモンゴル代表のエースナンバー10を背負って活躍しています。

メンタルの強さ

私がトップ下で、ハバが左ウイング、というポジションでの出場が多かったのですが、試合中にハバから「俺がゴールを決めるから、まず俺を見ろ」というような内容のことを何度も言われました。実際にチャンスでパスを出さずに私がシュートを打って外すと「こっちにパス出せよ!」と何度も言われました。
その選択があっているかどうかは置いておいて、この言葉が表す通り、自己主張が強く、良い意味でのわがままな選手です。なかなか日本人には居ないタイプ。しかし、それが言えるのは絶対的な自信があるからこそ。実際に、ゴールやアシストという結果を残していました。まだまだ海外でプロサッカー選手として生き残っていくためにどうすればいいのか何も分かっていなかった私にとって、彼のメンタリティーからは学ぶべきことが多かったと思います。実際に今までの私は、強く自己主張するとチーム内で浮いた存在になってしまうのではと考えてしまったり、チームワークが大事だから…という理由付けをして、優しい口調で周りに気を使って主張をしたり、自分が嫌われたくないから言いたい事を我慢したり、という部分がありました。ですが、サバイバルが激しいこのフットボールの世界で生き残るために、遠慮などしていたら生き残っていけないということを、ハバのメンタリティーから強く学んだ気がします。確かに一歩間違えれば、ただのわがままな奴になりかねません。ですが、自分という存在を強く主張し、結果も残してチームを引っ張るハバの姿は、その当時の自分に足りていない部分であったと思います。彼のような、国を背負って戦う選手と一緒にプレーできたことは、私にとって間違いなく大きな刺激となりました。

可能性を秘めているモンゴル

モンゴルサッカーの存在は、日本をはじめ、世界的にもあまり知られていないのが事実です。全体的なレベルで見たら、正直まだまだ日本とは差があるように私は思います。ですが、今回紹介させて頂いたハバのように、モンゴルにも大きな可能性を秘めた選手がいるのも事実です。現在、北海道コンサドーレ札幌に所属するタイ代表のチャナティップ選手や、藤枝MYFCに所属するカンボジア代表のワタナカ選手のように、いつかモンゴル出身の選手がJリーグで活躍する日が来ると、私は思っています。ハバのように、言葉の壁は既にクリアしている選手だっています。そう考えたら、もっと活躍すれば彼にもチャンスがあるのではないか!?と、勝手に妄想してみたりします。それは私自身にも言えることで、どこで誰が見ているか分からないサッカー界。1日1日を真剣に過ごし、いつ来るか分からないチャンスに力を発揮できるよう、毎日を全力で闘い続けることが、きっと究極の理想の自分に近づく唯一の道だろうと思っています。またいつかハバと一緒にプレーして、今度は初ゴールをアシストしてくれたお返しができたら最高ですね。いまは住んでる場所もチームも違いますが、今後もお互い刺激しあいながら成長していける存在でありたいと思う次第です。

大津一貴 / Otsu Kazutaka (@kazuuu02) | Twitter

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The latest Tweets from 大津一貴 / Otsu Kazutaka (@kazuuu02). 北海道札幌市出身/ 癌サバイバー / 脱サラ海外リーガー/ FC Ulaanbaatar(モンゴル)→Three Kings United(ニュージーランド)→Kamphangphet FC(タイ) サッカーで世界を渡り歩いていますHP⇨https://t.co/c35I1zHosk. Kamphangphet Thailand

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